「抜け毛・ほこりをキャッチするシートの製造販売 /アイディアを特許出願して事業化したい」
「こんなアイディアで特許を出願して事業化したい」
ということで、知的財産担当のコーディネーターとの相談に八木さんが来られました。
彼女のアイディアは「洗髪して乾かす際に抜け毛が出ますが、それがとても多い人がいるのです。抜け毛で床を汚すことになり、自分で始末するのも大変なので、抜け毛をキャッチできるシートが足元にあったら便利だと思うのです。」というものでした。
そこで、特許出願は進めつつ、事業化の可能性についてマーケティング担当のコーディネーターと改めて相談することになりました。
発明が大好きな方は特許が取れたらすぐにお金になると思っておられる方がとても多く、八木さんも同じかなと思いましたが、具体的なターゲットやベネフィットについてきちんと考察されていて、基本的なスタンスから違っていました。
実際、次の相談時には「高級ホテルやスポーツジムなら需要はあると思ので、そういったところに売り込みたいです。」と言われました。
このアイディアはとてもユニークかつ実体験に基づくものなので一定の市場はあると考えられますが、実際にホテルやジムがコストを負担するかどうかが全く読めませんでした。
そこで「可能性がありそうなホテルやジムなどに、導入する余地があるかを調べること」、「知人女性などを対象に、似たような悩みや意向を持つ女性がどれ位いるのかを確認すること」という2つのアンケート調査を行うよう、担当コーディネーターが提案しました。
この結果によって製品化と事業化を行うかどうか、八木さん自身も創業するかどうかを判断しましょう、ということになりました。こういう調査は面倒なので、なかなかきちんと実行されない人が多いのですが、八木さんはビジネスにしたいという意思が明確なので、これらの調査をしっかりと行っておられました。
◆テストマーケティングを重ねる
顧客やエンドユーザーに対する調査結果は予想以上に好感触で、本格的に前に進もうということになりました。次は八木さんの知人の伝手でホテルや温浴施設、コーディネーターの伝手で芦原温泉の旅館に試作品を持ち込んでテストを依頼することになりました。
いずれも製品自体には好反応で、デザインとコストが折り合えば導入してもよいという返事が来ました。事業化後の販路開拓も視野に入れて、テストを依頼する先を拡大していきました。
◆デザインの工夫と知的財産権の確保
当初から難しいと考えていた販路開拓は目処が立ちましたが、製品化の方は予想よりも難航しました。製品のサイズ、形状、接着剤の強度など、なかなか思ったような仕上がりにならず、試作と検討を繰り返しました。並行して、デザインとネーミングを議論し、商標登録なども検討しました。試作品の改良に合わせて、テストマーケティングを行った先などに提示して意見を聞き、改良を重ねて製品が完成しました。
事前のテストマーケティングが奏功して、先般、東京の大手ホテルで採用が決定し、製品が導入されています。